答えている問いが違う
標準偏差はデータを表します。個々の値がどれだけばらついているかです。平均の標準誤差は推定を表します。実験をやり直したら平均そのものがどれだけ動くかです。一方は測った対象の性質で、もう一方はどれだけうまく測れたかの性質です。
式
SD = √(Σ(x − 平均)² ÷ (n − 1))
SEM = SD ÷ √n
平均 20、SD 4 の 10 個の値なら SEM は 4 ÷ √10 = 1.26。100 個で SD が同じ 4 なら SEM は 0.4 まで下がります。
SEM のほうが常に見栄えがよい理由
SD はデータを増やしても縮まず、母集団の本当のばらつきに落ち着きます。SEM は √n に従って限りなく小さくなるので、SEM を描けば標本を増やしただけでエラーバーが短くなります。これは「平均がより正確になった」ことの正しい記述であり、同時にばらつきについては誤解を招く絵です。だからどちらを使ったか書いていない図は読めません。
どちらを報告するか
- SD: 標本を記述するとき。患者の年齢、細胞の直径、読者が想定すべき値の幅。
- SEM か信頼区間: 平均を比較するとき。比較が依拠している不確かさはこちらです。
- 95% 信頼区間: SEM より分かりやすいことが多く、標本が大きければおよそ 平均 ± 1.96 × SEM です。読者が換算しなくてよい幅の形で示せます。
どちらを選んでも、n とあわせて図の説明に書いてください。「平均 ± SD、n = 12」と書けば、曖昧さは消えます。
エラーバーの読み方
SEM のバーが重なっていても差がないことの証明にはならず、重なっていなくても差があることの証明にはなりません。2 群なら、おおよそ 1 SEM 以上離れたバーは 5% 水準で有意になることが多いですが、正直な答えは検定と P 値から出るもので、図を見て決めるものではありません。
標本か母集団か
SD の式の n − 1 はベッセル補正です。標本しか手元にないときに n で割ると、ばらつきを小さく見積もってしまいます。n で割る形を使うのは、数字が集団の全員分であるときだけで、実験室でそうなることはほぼありません。
ツール
標準偏差の計算は貼り付けた数値列から SD・SEM・分散・四分位数を出し、標本と母集団の両方に対応します。t 検定の計算は 2 組の数値を比べて P 値を返し、加重平均の計算は値の重みが等しくない平均を扱います。