Toolyard

二項分布、釣り鐘曲線とゴルトンボード

ボード

ゴルトンボードは、互い違いに並んだ釘の列の下にビン (仕切り) が並んだ板です。上から落とした玉は各列で釘に当たって左か右に進み、右に行った回数に対応するビンに入ります。フランシス・ゴルトンは 1870 年代に、偶然から秩序が生まれることを示すためにこれを作りました。1 個ごとの玉の行き先は予測できませんが、何千個もの玉は必ず同じ釣り鐘形の山を作ります。

二項分布の式

段数 n、各釘で右に行く確率 p のとき、ビン k に入る (n 回中 k 回右に行く) 確率は

P(k) = C(n, k) pk (1 − p)n − k

です。C(n, k) = n! ÷ (k! (n − k)!) はビン k で終わる経路の数で、pk(1 − p)n − k はそれぞれの経路の確率です。

計算例: 12 段、p = 0.5。中央のビン k = 6 には C(12, 6) = 924 通りの経路があり、それぞれの確率は 0.512 = 1 ÷ 4,096 なので、P(6) = 924 ÷ 4,096 = 22.6% です。端のビンへの経路は 1 通りで、1 ÷ 4,096 = 0.024% です。1,000 個の玉なら、中央に約 226 個、両端にはそれぞれ 0 個かせいぜい 1 個です。

平均と標準偏差

μ = n p、σ = √(n p (1 − p))

12 段、p = 0.5 なら μ = 6、σ = √3 = 1.73 です。正規分布では平均から ±1σ 以内に 68%、±2σ 以内に 95% が入りますが、このボードではビン 5〜7 に 61% の玉が入ります。ビンは整数で、1σ ではビン 4 と 8 に少し届かないからです。σ は √n でしか増えないので、段数を 4 倍にすると山の幅は 2 倍になりますが、ボードの幅に対しては半分になります。

正規近似

n が大きいと、二項分布は同じ平均と標準偏差をもつ正規曲線 f(x) = e−(x − μ)²/2σ² ÷ (σ√(2π)) に近くなります。よく使われる目安は、n p と n (1 − p) がどちらも 5 以上 (本によっては 10 以上) であることです。p = 0.1、12 段では n p = 1.2 で、山は左端に寄って偏り (歪度 (1 − 2p) ÷ σ = 0.77)、左右対称の釣り鐘はうまく合いません。

中心極限定理

はね返るたびに小さなランダムな一歩が加わり、ビンはその合計です。中心極限定理によれば、独立した多くのランダムな量の和は、それぞれがどんな分布であっても、ばらつきが有限であれば正規分布に近づきます。サイコロでよくわかります。サイコロ 1 個は平らで、どの目も 1/6 です。2 個では 7 を頂点とする三角形になります。n 個の目の合計は平均 3.5 n、分散 35 n ÷ 12 で、5〜6 個になると釣り鐘とほとんど区別できません。身長、測定誤差、試験の点数のように、多くの小さな影響の合計である量がよく正規分布に見えるのはこのためです。

山の検定: カイ二乗

山は二項分布と矛盾しないか、それともボードに偏りがあるか。観測度数 O と期待度数 E = N × P(k) を次の式で比べます。

χ2 = Σ (O − E)2 ÷ E

各ビンの期待度数が 5 以上になるまで隣のビンとまとめ、自由度はビン数 − 1 とします。p 値は、ボードが公平だとしたときにこれだけ大きな χ2 が出る確率です。計算例: 4 段、p = 0.5 のボードに 200 個の玉を落とすと、期待度数は 12.5, 50, 75, 50, 12.5 です。観測が 15, 44, 80, 47, 14 なら、χ2 = 0.50 + 0.72 + 0.33 + 0.18 + 0.18 = 1.91、自由度 4 で p = 0.75 となり、偶然の範囲内です。

シミュレーションの使い方

ゴルトンボード シミュレーター は玉を落とし続けます。棒は各ビンの割合、破線は厳密な分布、緑の曲線は正規分布です。画像の下には標本平均と標本標準偏差が期待値と並び、カイ二乗検定の結果も表示されます。試してみましょう。

  • 時間変化のグラフで標本平均を見る: 最初は揺れ動き、やがて μ に落ち着きます。誤差は σ ÷ √N のように小さくなります。
  • 6 段で p を 0.15 にする: 山は偏り、正規曲線は外れます。20 段にすると再び釣り鐘形になります。
  • サイコロに切り替え、n を 1 から 6 まで増やす: 平ら、三角形、そして釣り鐘形になります。
  • そのまま動かして p 値を見る: 公平なボードなら 0 から 1 の間をさまよい、約 20 回に 1 回は 0.05 を下回ります。

モデルの前提

  • はね返りは独立で、p はどこでも同じ。 どの釘も前とは無関係な新しいコイントスです。これが二項過程の定義です。
  • 各段でちょうど 1 回はね返る。 玉は必ず次の釘に当たり、釘の間隔の半分だけ左か右に移ります。段を飛ばしたり 2 回はね返ったりはしません。
  • 玉どうしは影響し合わない。 玉は互いにすり抜け、詰まったり押しのけ合ったりしません。
  • サイコロは公平で、サイコロモードではどの目もちょうど 1/6 です。
  • 擬似乱数生成器を偶然の代わりに使っています。実際のボードに必要なよりはるかに一様です。

境界的なケース

  • 1 段はコイントス 1 回です: ビンは 2 つで割合は 1 − p と p、釣り鐘曲線は意味をもちません。
  • p が 0 や 1 に近い: ほとんどの玉が同じ端の経路をたどり、分布は偏って、平均 n p のポアソン分布に近くなります。
  • 玉が少ない: 数十個未満では山はぎざぎざで、カイ二乗検定にはビンあたりの玉が少なすぎます。期待度数 5 のビンが 2 つ以上できるまで待ちます。
  • サイコロ 1 個は山のない平らな分布で、釣り鐘とは正反対ですが、まさにそこが中心極限定理の出発点です。

モデルが成り立たなくなる場合

  • 実際のゴルトンボードは理想的ではありません。 玉には勢いがあり、右に行ったあとはまた右に行きやすいので、はね返りには相関があり、山は二項分布より広くなります。玉が釘を飛ばしたり詰まったりすることもあります。
  • すべてが和ではありません。 所得や粒子の大きさのように多くの因子の積で決まる量は対数正規分布で、長い裾をもつ偏った形になります。中心極限定理が当てはまるのはその対数です。
  • 裾の重い分布。 1 歩ごとの分散が有限でない場合 (たとえばコーシー分布)、和はいつまでも正規分布になりません。
  • 依存性。 株価の動き、感染症の流行など、ある出来事が次の出来事を変える過程は二項分布に従いません。独立なコイントスとして扱うと極端な値を過小評価します。
  • 正規曲線は連続で範囲に限りがありませんが、ビンは 0 から n までの整数です。裾のずっと先では、0 未満や n を超える、小さいけれどありえない確率を与えます。

関連ツール

自分のデータの平均、標準偏差、標準誤差は 標準偏差の計算 で求められます (標準偏差と標準誤差 も参照)。本物のコインは コイントス、サイコロは サイコロ で振れます。サイコロの確率:出目ごとの確率 では確率を手計算で求めています。

このガイドで使うツール

その他のガイド