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ゲル電気泳動のしくみと DNA ゲルの読み方

DNA を動かすもの

DNA のヌクレオチドはそれぞれリン酸に負電荷を 1 つもつので、電場の中で DNA は正の電極 (赤い方) へ移動します。「赤へ走る」と覚えておくと便利です。自由溶液中では電荷も摩擦も長さに比例して増えるので、100 bp の断片も 10,000 bp の断片も同じ速さで進むはずです。断片を分けるのはゲルです。アガロースは孔のある網目を作り、長い分子ほど網目をすり抜けるときに強く引き止められます。

バンドの位置を決めるもの

  • 断片の長さ。 ゲルの有効範囲では、移動距離は長さの対数に対してほぼ直線的に減ります。サイズが 2 倍になると、その範囲のどこでもバンドはほぼ同じ距離だけ手前に来ます。
  • アガロース濃度。 濃いゲルほど孔が小さくなります。目安は、5〜20 kb に 0.7%、0.5〜10 kb に 1%、0.2〜3 kb に 1.5%、50 bp〜1 kb に 2〜3% です。
  • 電場の強さ。 速さは電圧そのものではなく、電極間の 1 cm あたりの電圧に比例します。通常は 5〜8 V/cm で、電極間 15 cm の泳動槽のミニゲルなら約 100 V です。
  • 形。 スーパーコイルのプラスミドはコンパクトで、同じ長さの直鎖状 DNA より速く進みます。ニックの入ったプラスミド (開環状) は引きずられて遅れます。RNA や 1 本鎖は折りたたまれ、予測しにくい動きをします。
  • バッファーと色素。 TAE は大きな断片、TBE は小さな断片をやや分けやすくなります。臭化エチジウムは DNA をわずかに遅くし、ローディング色素はゲルによって決まるサイズの断片と一緒に泳動します。1% アガロースでは、ブロモフェノールブルーは約 300〜500 bp、キシレンシアノールは約 3〜4 kb と同じ位置です。

ラダーでバンドのサイズを求める

ラダーはサイズが既知の断片の混合物で、専用のレーンで泳動します。ウェルから各ラダーバンドまでの距離を測り、log10(サイズ) を距離に対してプロットして直線を当てはめます。これが検量線です。未知のバンドのサイズはこの直線から読み取ります。

計算例: 1% ゲルで、ラダーの 3,000 bp のバンドが 2.6 cm、1,000 bp のバンドが 4.0 cm 進んだとします。2 点を通る直線の傾きは (log10 1,000 − log10 3,000) ÷ (4.0 − 2.6) = −0.477 ÷ 1.4 = −0.341 /cm です。3.3 cm にある未知のバンドは log10(サイズ) = log10 3,000 − 0.341 × 0.7 = 3.477 − 0.239 = 3.238 なので、サイズは 103.238 ≈ 1,730 bp です。未知のバンドをはさむ 2 本のラダーバンドか、複数のバンドに当てはめた直線を使い、最後のラダーバンドより外側は読まないようにします。

よくある結果の読み方

  • 未切断プラスミド: バンドが 2〜3 本で、スーパーコイルがいちばん下、ニックの入ったものがいちばん上、ときに直鎖状がその間に出ます。直鎖状のラダーで見ると、どれもプラスミド本来のサイズの位置にはありません。
  • 直鎖化したプラスミド (1 か所切断): 全長の位置に 1 本のバンド。1 種類の酵素で切れたことのよい確認になります。
  • 二重消化: 断片の合計がプラスミドのサイズになるはずです。ならない場合は、小さな断片がゲルから流れ出たか薄すぎるか、似たサイズの 2 つの断片が 1 本のバンドに重なっている可能性があります。
  • PCR 産物: 期待したサイズに 1 本のシャープなバンド。スメアは鋳型やサイクル数が多すぎること、余分なバンドはプライマーが別の場所に結合していること、いちばん下のぼやけたバンドはプライマーダイマーを示します。

シミュレーションの使い方

ゲル電気泳動シミュレーター のレーン 1〜6 には、ラダー、未切断のプラスミド、1 か所と 2 か所で切断したプラスミド、PCR 産物、入力したサイズが入っています。泳動はすぐに始まります。ブロモフェノールブルーの先端が全体の約 4 分の 3 まで進んだら止め、画像の下でサイズを読み取ってください。各サイズは、まだゲル上にあるラダーバンドに当てはめた直線から推定しています。試してみましょう。

  • レーン 6 を 100, 150, 200 にして 1% ゲルを泳動する: 3 本は色素の先端のすぐ前にまとまって進みます。2.5% でやり直すと分かれます。
  • 1% アガロースでレーン 6 を 20000, 30000, 48000 にする: 3 本は 1 本のバンドに重なります。限界移動度です。
  • 電圧を 250 V にする: 速く泳動できますが、ゲルが熱くなってバンドがにじみ、中央のレーンが端のレーンより先行します (スマイル)。
  • 泳動を続ける: 小さな断片と色素が端から流れ出て失われます。

モデルの前提

  • 経験的な移動度の式 μ = μ0 ÷ (1 + (L ÷ L*)0.9)、L* = 2,000 bp × (1% ÷ T)1.4 を使い、TAE 中の 0.5〜3% アガロースで現実的な位置になるようにしています。これは当てはめの式であって DNA が孔を通る理論ではなく、数値は代表的なもので、特定の銘柄のアガロースに正確に合うわけではありません。
  • 非常に長い DNA の限界移動度を設け、それより遅くなる断片はないとしています。1% アガロースでは約 20 kb で達します。
  • プラスミドの形の係数は固定です。スーパーコイル DNA は長さ 0.6 倍の直鎖状 DNA、ニックの入った DNA は 1.8 倍の直鎖状 DNA と同じように泳動するとしています。実際には、ゲル濃度、電圧、スーパーコイルの程度、ゲル中の臭化エチジウムの有無で係数は変わります。
  • 消化断片は等モルとし、バンドの明るさは長さに比例、試料レーンあたりの DNA は 300 ng としています。バンドが見えるには約 2 ng が必要です。
  • 電場と温度はゲル全体で一様、電極間 15 cm、バッファーの抵抗 1.6 kΩ とし、10 V/cm を超えたときだけ簡単な発熱のペナルティを加えています。
  • バンドの幅は拡散とウェルの幅で決まるとし、試料の入れすぎ、試料中の塩、ウェルの不ぞろいなど、実際のバンドをゆがめる要因は含めていません。

境界的なケース

  • ラダーの範囲外の断片には疑問符が付きます。直線をデータの外まで延ばしているので、大きく外れることがあります。
  • ほぼ同じサイズの 2 つの断片は 2 倍の明るさの 1 本のバンドになります。明るさでしか見分けられません。長めの泳動や濃いゲルで分けられることがあります。
  • 非常に小さな断片 (1% アガロースで約 100 bp 未満) は色素の先端と一緒に泳動して隠れ、約 2 ng 未満のとても薄いバンドは現れません。
  • プラスミドより長い断片は二重消化ではありえません。切断部位の間隔をプラスミドで許される以上に設定すると、シミュレーションが制限します。
  • 端を越えて泳動した場合: 色素がゲルを出てしばらくすると泳動は止まり、流れ出たバンドのサイズは求められません。

モデルが成り立たなくなる場合

  • 約 20〜50 kb を超えると、DNA は一端を先にして蛇のように進むレプテーションで動き、長い断片はすべて一緒に泳動します。これを分けるにはパルスフィールドゲル電気泳動が必要で、このモデルでは表せません。
  • ポリアクリルアミドゲルは、シーケンシングのように 1 塩基違いの断片も分けられます。アガロースではできず、この式は当てはまりません。
  • タンパク質は SDS-PAGE ゲルで、別のしくみ (SDS が長さに比例した電荷を与える) で分けます。その場合は SDS-PAGEゲルの計算 を使ってください。
  • 1 本鎖 DNA と RNA は折りたたまれて速さが変わるので、サイズどおりに泳動させるには変性ゲルが必要です。
  • 実際のゲルは一様ではありません: 発熱のむら、傾いたゲル、塩、1 レーンに多すぎる DNA は、バンドを曲げたりにじませたりします。ゲルを読む人はそれを見分けられるようになりますが、モデルには現れません。

計算ツール

ゲルは アガロースゲルの計算 (とガイド アガロースゲルの作り方) で作れます。自分の測定値からバンドのサイズを求めるには ゲルのバンドサイズ推定、消化で生じる断片を予測するには 制限酵素地図 を使ってください。

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